2022/10/19 16:26
オーストラリアを地図で見て、いちばん右下の大都市・シドニーを擁するのがニュー・サウス・ウェールズ州、そのとなりを左下に行くとメルボルンのあるビクトリア州です。
2019年の6月にこのへんに行って参りました。
ワイン関係で申しますと、ヤラ・バレーを訪問しました。
いま流行の外資系の旅行サイトから検索したりして、ワイナリーが併設する高級そうなコテージを予約して宿泊し、併設のレストランで食事をしました。
結構づくめでしたので、その土産話はまたこんどの機会に譲るとしまして、本日のワインは、そのオーストラリア大陸をもっと西へ進んだ産地のものです。
西ということは、地図でいいますと左ということになります。
ヴィクトリア州の左となりに位置していて、オーストラリア大陸全体の右半分の経度線までを占めるのがサウス・オーストラリア州です。
ここに、国内大手ワイナリーが集まるバロッサ・バレーがあります。
今日ご紹介するヘントリー・ファームは、輸入元のお話しによりますと、規模ではなく品質において豪州でナンバー1の評価を得ているそうです。
中には、1本10万円を超えるワインもあって、その品質がこのワイナリーの看板になっているようなことを、輸入元の社長であるアンドリューさんから教えてもらいました。
へ~。
1本10万円ですか。。。
ちょっと手も足も出ない価格帯ですね。。。
でも、そういうワイナリーが造っているということは、土壌・気候・造りにそうした背景が反映されますから、あんまり下手は打たないだろうなという期待は持てますね。
無論、ちゃんと試飲するまでわかりませんが。
このワインは、グリーノック・クリークというエリアだか区画だかの単一畑の葡萄を使っているそうです。
若いころにブルゴーニュの区画を細かく勉強した記憶が甦ります。
もう能書きを覚え込む脳の空き容量も残っていませんし、Windowsの旧バージョンもあと数日の命というご時世に、外付けHDDかSSDのようなものにバサっと古いファイルを一挙に移してしまって、また新しくて大きな記憶容量を取り戻すことができるんだったら嬉しいのですが、老生の脳を再活性化してくれる装置はどこかにないものかとアマゾンを探しましたが、当然そんなものはありません。
なので、南半球の畑名などをことさら強調するのは、自分自身が覚えられないので最初からあきらめて、いきなりお味の方に入ります。
グラスに注ぐと、まづもって動物的な香りを感じます。
ワインの教科書には、例によって「麝香(ジャコウ)の香り」などと書いてありますが、そんなこと言われても何のことかサッパリわからないので、これを試飲した時に思い当たった勝手な印象で表現しますと、かすかに豚骨ラーメンのニュアンスです。
これは珍しい!
ワインの香りの表現として豚骨ラーメンなどと言われても、あまり美味しそうなイメージを持てないかもしれませんが、1口含むとその香りは完全に消えますのでご安心ください。
自然派ワインに特有の還元香なのかもしれません。
一筋縄ではいかない複雑さを予感させる幕開けといえましょう。(むりくり系ですが)
正直なところは、1口目から「これは美味い!」と叫んでしまう味わいです。
それには驚きました。
それでいて、このシラーズは最近の流れに沿った近代的な造りです。
とにかくキレイな酒質です。
昔のシラーズは、濃くて太いという印象がありますが、これが根本的に覆されます。
味が深くて美味しいのに、透明感があってキレイなのです。
バランスが良くて、奥行きがあります。
いままで日本人は、こういうシラーズをあまり、というかほとんど飲んでいませんでした。
弊店の経験からしても、シラーズをお求めになるのは、「濃いの」「パワフルなの」をお探しのお客様が大半でした。
酒質的にこのようなキレイ目系のシラーズは、以前からオーストラリアとかで造られて日本でも出てはいたのですが、実際におすすめしてみると、あまり色よい反応がありませんでした。
(需要サイドに、「シラーズ=パワフル」の固定図式に基づく期待があるため)
しかし、ここまで純粋にキレイで、都会的なフィネスを備えたシラーズを見つけてしまうと、これは自信をもってお客様に「宗旨替え」をお奨めすることができます。
もう、「強者信仰」をやめませんか? というお誘いです。
遠く平家物語にも、「盛者必衰」とあるではありませんか。
「太い」よりも「細い」ほうが、長く続くという考え方もできます。
どんなに強くても、先に滅んでしまってはなんにもなりません。
永続性が大切です。
このワインを飲んだ人は、どの日本人よりも最新の豪州シラーズの通人になることができます。
「このエリアでこのクラスの単一畑のワインなら、1万円くらいしてもおかしくない」と、さきほどのアンドリューさんは力説しています。
その真偽のほどは実は重要ではなくて、これがこの価格で楽しめるのですから、実際問題としてお買い得な1本といえると思います。