2022/12/28 11:49
(※この記事は2021年11月に執筆したものです)
今日は二の酉です。さきほど、お酉さんへ行って参りました。
一昨年、コロナ直前のときには、酉の市発祥の地といわれる浅草の鷲(おおとり)神社にて熊手を求めましたが、あまりの混雑ぶりに音を上げまして、次年からは地元深川の大鳥神社にお参りしています。
今日は時期として七五三と合致していますので、神社は多くの七五三の参詣者で賑わっていました。
酉の市も七五三も、日本伝統の年中行事です。
年中行事といえば、さきおとといの11月16日は第三木曜日ということで、ボジョレー・ヌーボーの解禁日でした。
いま、「さきおととい」と入力して変換キーを押してびっくりしました。
「一昨昨日」と変換されたのです。
「いっさく・さくじつ」って、こんなのが「さきおととい」の漢字だったなんて、アラカンにして初めて知りました。
ちなみに、子供の頃から手許に置いて愛用してきた『新明解国語辞典』(昭和47年初版)がいまだに手許にあるので、ひいてみたのですが、語義は載っていますが漢字でどう書くのかは載っていません。
隣に「さきおととし」の項があって、そこには語義だけではなく「一昨昨年」と漢字が載っていますので、アナロジーでは肯定できることになります。
脱線から本線へ戻りますと、ヌーボーについては、いちいち「出来が良いの悪いの」「濃いか薄いか」などについて、しかめっ面して講釈を垂れるのはスマートとはいえません。
そうではなく、今年も新酒ができ、それを戴けることへの感謝を込めて愛(め)でるという年中行事として楽しむことを弊社では長らく推奨しています。
つまり、毎年秋の収穫に感謝する祭礼ということです。要は、毎年恒例のセレモニーです。
今年の七草粥が美味いの不味いのという人がいないのに、ヌーボーではそれを話題にしたがる人が多いことに、毎年ながら辟易するのですが、今年はさすがにコロナ禍もあって、いつになく静かなヌーボーの日を迎えました。
今年手にしたのは、PETボトル入りのヌーボーです。
小売価格でも懐にやさしい3桁円でしたが、度数12.5%と十分に醗酵しています。
このメーカーのスタイルというよりも、哀しき日本人の嗜好が反映されているのでしょうけれど、新酒ならではの弾けるような躍動感というよりも、重めの色調で落ち着いた骨格を構成していました。
ボジョレー・ヌーボーを飲むにあたっては、「美味しい vs 不味い」とか、「濃い vs 薄い」というような「白黒つける」式の評価をするよりも、「みんないい子だよ~」という大人物の見地から、今年の良さはどこにあるのか?という発想で思いを巡らせると、ワイン愛好家としての成熟度を示すことができるでしょう。
で、お料理には影の鉄板コンビともいえる、とんかつにお出まし頂きました。
ボジョレー地区の赤ワインの葡萄品種は、ほぼガメイ一択です。
ガメイにもいろいろなワインを造り出す多様性があり、ヌーボーのやさしい味わいは和食にも相性が良いことで知られます。
とりわけ、たれの焼鳥、肉じゃが、鴨南蛮蕎麦などに好相性を示し、中華では飲茶の多様な品目を一網打尽にすることができます。
トンカツというのも不思議な献立です。
素材や調理技術もさることながら、食べ手が自ら振りかける「とんかつソース」が元々備えている味によって左右されてしまいます。
このとんかつソースですが、原材料表示の筆頭には、「野菜果実(トマト、りんご、プルーン、レモン、にんじん、たまねぎ)」と書いてあります(ブルドックソースの場合)。
これがトンカツの素材である豚のロース肉の引き締まった正肉と甘美な脂身、それを包むパン粉の衣に浸透した揚げ油、こうした癖のある顔ぶれの役者たちを丸ごと茶色に染め上げて、食べ手の口の中へ運ばれていきます。
つまり、トンカツだけではとんかつは完成せず、とんかつソースがかかって初めてとんかつが完成するといえます。
その「とんかつソース付きトンカツ」にぴったりと合うのが、ボジョレー・ヌーボーです。
素材の脂身と揚げ油の双方をうまく浄化します。決して旨味をそぐようなことはせず、でしゃばることもなく、それでいて肉片の一口ごとに新鮮な美味しさを演出し続けてくれました。
酉の日を四つ足で祝いました。