賢者のワイン

2022/12/28 11:49



コンフィは、時間はかかるけれど腕の巧拙は問われません。
そういう意味では、我々素人向けの料理といえます。

ここ数日、軽快な献立が続いたこともあって、ガッツリ四つ足系を食べたくなりました。
そこで、骨付き肉で勝負と相成りました。

コンフィのよいところは、どんな難物でも柔らかく、食べやすく、美味しくなるところです。

近所のスーパーで、国産銘柄豚のスペアリブが100g 170円で出ていたので、800gほど購入。
塩胡椒、ハーブソルト、クレイジーソルトなどを総動員で摺り込みます。

ワインの相手になることが最初からわかっていますので、塩味は強めにしておくのが当家流です。
ここで少々お塩を増量したところで、塩分控えめなどの心配はまったくご無用です。

なにせラーメン1杯に含まれる塩分量たるや、7~8gは普通にあります。
食塩小さじ1杯が6gですから、ぞっとする分量です。

それに比べたら、肉の下味に振りかける塩など可愛いものです。
そのうえ、コンフィでは出来上がったらソースなどをかけずに、そのまま頂きますから、塩分総量は抑制的です。



にんにくの輪切り、月桂樹の葉などを添えて、冷蔵庫で1晩置きます。
流派によって、1時間でいいという人もいれば、半日という人もいるし、寸分置かずに次工程に移るレシピもあります。

要するに自分の口に入る料理なんぞ、旨きゃいいんです。

こいつをこんどは、ひたひたのオリーブオイルに漬けてオイル煮にします。



以前は、鍋でやってたのですが、90分とか150分とか(これも流派でもっていろいろあるのですけど)結構な時間をかけるので、オーブンレンジに任せるようになりました。

IHではあっても、火の番から解放されるのは心のゆとりができます。
なんといっても、「90℃」と設定すればその通りの温度でずーと温めてくれるのがいいです。

150分煮込んだら、粗熱を取ってから再び冷蔵庫へいきます。
このように熱いのと冷たいのと油の中で交互に繰り返すことで、食材を柔らかくする効果があるんだそうです(真偽のほどはよく知りません!)。



翌日の状態です。
肉の頭が油から出ちゃってますが、ご愛嬌ということで。。。

三国シェフが砂肝のコンフィを紹介する画像を見ていたら、オイルで煮たら冷却しないですぐにフライパンで炒めていました。

それならまだわかるんですが、料理系ブロガーの投稿動画のなかには、オイル煮で完成というレシピがありました。
うーん、油でべったりしたコンフィねえ。。。

まあ、アヒージョの亜流と考えれば、なくはないのでしょうけれど、あんまり食指動かないですね~

やっぱり、カラっと、こんがりと、炙りたいんです。
前回、鶏腿肉のコンフィをやったときに、この最後の炙りが不十分で、皮目がパリっとしなかったことがあって、折角の前工程にかけた時間を充分に償えなくて勿体ない思いをしたことがあったので、今回はじっくり炙り焼きをしました。



まだ20代の頃でしたが、フランス料理のレストランでコンフィなるものを初めて食べたときに、随分とパサパサした料理なんだなと感じたことをまたしても思い出します。(その良さがわからなかった)

最後のローストで脂分を抜いちゃうところに、コンフィの真髄というのも大袈裟ですけど、あるんだというのは最近ひしひしと実感します。

さて、本日のお相手はこちらです。



コート・デュ・ローヌのラストーです。

自分がワインの勉強をしていた頃には、ACラストーというのはヴァン・ド・ナチュレといいまして、醗酵の途中でブランデーを加えて、果汁の甘味を残して仕上げる酒精強化ワインでした。
その後、2010年とのことですが、普通のワインも呼称指定入りしたそうです。

真っ黒に近い漆黒の色合いに、ベリー系の黒っぽい果実の香り。
丸く穏やかな口当たりに、満腔を覆う果実味と馥郁たる広がりのあるワインです。

15度のパワーと十分なタンニン分がそれと気づかぬ程度まで溶け込んで、心地よくラウンド化しています。
渋いとかガツンと来るとかといった、何らかの特質が前面に出ているのは、バランスを欠いた欠格証明なのだということを再認識させてくれるワインです。

要するに、1つのキャラクターが突出するのではなく、丸く穏やかでありながら、得も言われぬ複雑さを秘めている大人(たいじん)の風格といえます。

骨付き四つ足のオイル煮を、絶妙な手捌きで料理してくれたのは、ワインでした。

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