賢者のワイン

2023/03/29 16:32

コロナ自粛も明けましたので、3年ぶりのお花見を楽しみにしていました。

そうしたら、ことしは桜前線と菜種梅雨が同時進行となってしまいました。



満開を控えて、八分から九分咲きという染井吉野の樹の下には、嵐に散る花弁が濡れ落ちています。(鳩が1羽たたずんでいます)
自然の巡り合わせは、時に残酷なものです。

この写真は先週(3月24日)に撮影したものですが、さきほど(3月29日)現地を見てまいりましたら、週末の風雨を経てもなお、樹上の花びらはまだまだ健在でほっとしました。
こちらがハラハラするほど桜も弱いわけではないみたいです。

もっともこれは、満開前から満開期だからでありまして、ひとたび咲ききってしまえば、ほんの「そよ風」でも散ってしまうのですが。

ワインも同じです。

上り調子や絶頂期にあるワインと、絶頂期を過ぎたワインとでは、扱いを変えなくてはなりません。

グラスに注がれるや、ワイングラスの脚を持って得意げにクルクル回す人がいます。
前世紀末のワインバブルのときには、西麻布界隈で毎夜のように多数目撃された怪奇現象でした。

残念ながら、令和の世にも生息中みたいです。

これを言い出しますと別の記事と重複するので、今日のところは深入りしませんが、お年寄りをいじめてはいけません。

平均寿命を超えた年代物のワインは、開栓前もグラスの中でも、やさしくやさしくいたわる心が必要です。

グラスに注ぐだけでも、多大なストレスを与えています。
そのうえ、大量の酸素に強制的に触れさせるのはいただけません。

咲ききって、散り始めている桜の枝を鷲掴みにして、ゆさゆさと打ち揺するのと同じことです。

ちょうど先日、春の嵐のさなかに、このような高貴なお年寄りにお目にかかる機会に恵まれましたので、感慨を深くいたしました。


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