賢者のワイン

2023/08/09 12:52



世の中には、何かで他人の注目を集めたがる人がいます。
教養のある人は、ことさらひけらかすことはしないものです。

聞かれたら答える、もしくは、聞かれても知らないふりをする、というのが人格者と呼ばれる人の行動パターンです。

ところが、たいていの人はその境地に達していません。
なにか自分が知っていることがあると、しゃべりたくなる衝動にかられます。

まして、同席している人から水を向けられた場合には、「待ってました」とばかりに、その気になって話し出してしまうのが凡人の悲しいサガというものです。

ワインおたくの場合には、これが極めて顕著な形で現れます。
ワインに関するなけなしの知識を声高らかに「解説」しているうちは、実はまだマシです。

聞いてもいないのにワインのウンチクを聞かされるだけでも、十分に迷惑なのですが、それでも「まだマシ」というのにはわけがあります。
通常、これを放っておくと、もっとエスカレートするからです。

聞き手の側にも問題があります。
ちょうど良い頃合で相槌を打ったり、合いの手を入れたり、ちょっとした(ありがちな)質問をしたりする、という「好意的な反応」が話し手を増長させる最大の原因です。

つまり、被害者に責任があるのです。

では、どのように対処したらいいのでしょうか?

聞きたくない語りが始まってしまったら、完全に黙殺します。完スルーです。
もちろん、相槌を打ったり、うなづいたりするのは厳禁です。

さらに強力な対抗策は、全然関係のない話題に移ってしまうことです。
容赦なく、話題を変えてください。

そのような自衛手段を適切なタイミングで講じないと、どういうことになるでしょうか?

この種の「迷惑行為への被害」に遭われた方ならおわかりのとおりですが、語り手がエスカレートして、ワインだけの解説から、ワインを好きな自分という人物譚になっていくのです。

要するに、ワインをツールとして「自己アピール」が始まります。
これはもっともやらせてはいけないことです。

ワインの知識自体も中途半端で、けっして人様に自慢できるような知識でも経験でもないにもかかわらず、それを超えて自己アピールを始めるというのですから、人間的な底の浅さは計り知れません。

「計測不能なほど浅い」底というのも、考えただけでも恐ろしいわけです。

興が乗ったときにどんな話をするのかで、だいたいその人の人間の幅とか奥行きというものはわかってしまうものです。

ワインおたくの場合には、かなり薄っぺらなケースが殆どでしょう。

薄っぺらなことが確認できたからといっても、同席者にはまったく得することはありませんから、そんな確認作業はしないに限ります。
つまり、ワインおたくには「いい気持」にさせてはいけないのです。

なお、この対処法は、同席者が一致団結して対処することが必要となります。
1人でも相槌を打ったりすると、そのパーティー全員が致命傷を追います。

冬山登山と同じような危険な状況です。
1人で勝手な行動をすることは、厳に戒めなくてはなりません。

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