賢者のワイン

2023/11/10 22:36



さいきん、東京の中心部では、新興のお鮨屋さんが静かに増えています。

統計データを取ったわけではなく、あくまで業界動向から得られる感覚ベースなのですが。

 

そう思っていたら、鮨屋(註、「鮨」は「寿司」よりも高級なカテゴリを指すのだそうです)では「資本系」と呼ばれる出店形態が増えているようです。


高額な鮨を提供する飲食店は、一発当てると高いリターンが期待できることから、それを狙って投資マネーが流入しています。

 

そこはプロ/アマの投資筋なので、リターンを求めて作戦を練るのは当然です。

その作戦とは、「お客を欺いても喜ばせる」という非情の錬金術です。

 

お客が喜んでカネを落としてくれるのは、板前が自分の店でやっている鮨屋です。

そこで、そのような「オーナー板前」にふさわしい若手職人をスカウトして、投資家側で用意した新規店舗に、オーナーとして振舞わせるのです。

 

どこをどう探ってもそのような内情を「開示」することはありませんし、つけ台に立つ当のご本人を問い詰めたところで、プロのシナリオライターによって周到に用意された「紆余曲折あって自分の店を持つことに漕ぎつけた苦労話」を滔々と聞かされるだけです。

 

きょうび、多くのお客はチェーン店を嫌い、個人営業の店を好みます。しかし、そんな店は多くありません。

 

資本系鮨店の静かな増殖は、そんな「板前が経営している個人店」を有難がるお客の感性が見透かされているといえます。

 

「いまどき珍しい店を見つけたよ」って吹聴したいのでしょうけれど、珍しいものがそんな簡単に見つかるほうが珍しいのです。



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