2023/11/13 15:00
ワインの発祥の地をめぐっては、世界中で争いがあります。
「人類最古のワインは当地で造られた」と自称する地域が地球のあちこちにあります。簡単に発祥の地を決めることは不可能ですし、あまり意味がありません。
そこで、いちおう欧州が近代におけるワイン「消費」の中心地だったということで話を進めることにします。
中心地であった欧州から離れると、徐々に遠ざかるにしたがって、たしなみ方や嗜好の方向性も変わってきます。(これはなにもワインに限りませんが)
アメリカ合衆国では、白は樽香、赤は有り余る果実味と甘味のニュアンスで、赤白ともにパワフルなテクスチャが好まれました。
日本では、ドイツとの関係から「白の甘口」が長らく支配的でした。
その後、フランス産が主役となり、1990年代のワインブームから南米・チリ産の濃厚な赤ワインがもてはやされるようになったのは記憶に新しいところです。
しばらくその「フルボディの赤」一辺倒の年月が流れていたのですが、平成の後期から「日本ワイン」のブームになって、ちょっと流れが変わってきました。
日本産にもカベルネやシャルドネ種による「フランス産やカリフォルニア産のような味わい」を求める層に代わって、日本産葡萄ならではのチャーミングでやさしい飲み口を評価する消費者が増えてきました。
令和の御代になって、その流れは決定的になりつつあります。
これは、同じ消費者が宗旨替えをしたというよりも、消費者の世代交代が大きな要素となっています。
なんでもそうなのですが、若い世代はお行儀が良くて、おとなしい傾向にあるのに対して、旧世代は万事につけて声髙に主張する傾向にありますので、声だけを聴いていると市場の動向を見誤ることになります。
ワインに従事する者として、この転換を注意深く追っていこうと思います。