2023/11/27 15:44
国立能楽堂で、宝生流の「阿漕(あこぎ)」を観ました。
「あざとい」ことの代名詞になっている阿漕は、いまの三重県にある阿漕ケ浦という名の海域です。伊勢神宮にお供えする神饌を獲るほかは禁漁となっている掟を破ったために、死罪となった漁師の亡霊の話です。
普及公演ということで、公演開始前に専門家による解説があります。
前回は、ベテランの女性の先生が和服姿で解説してくれたのですが、今回は、比較的若めの男性の大学教授が、普通の背広で登場しました。
伝統芸能というイメージとは反対に、軽妙な語り口で興味深く解説していました。
とはいえ、いくらわかりやすくというのが趣旨であっても、場所が国立能楽堂の能舞台上で松を背にしていますから、限度といいますか節度が求められてしまいます。
本当なら爆笑するようなギャグもお得意なのではないかと思わせるキャラクターとお見受けしたのですが、そこはぐっとこらえて、敢えて淡々と語るのでした。
しかし、本性は簡単には隠し通せず、つい笑いを取ってしまうという感じで、能楽堂に異例の笑い声(聴衆の自制心が発動された極めて抑制的な)が沸き上がるなど、その抜き差しの頃合いが絶妙でした。