賢者のワイン

2023/12/15 17:46


全世界の警察官を自任していたアメリカの地位は、このところ明らかに低下しています。


他方で中国とロシアは、もともと強権国家だったところへもってきて、さらにその傾向を強めています。


古手の大国たちが、このように醜い老化を急いでいる情勢にあって、グローバルサウスの領袖としてますます存在感を増しているのがインドです。


しかし大方の日本人にとっては、インドといってイメージするのは、カレーの風味やガンジス河の光景、あるいはカースト制度が根強いらしいといった断片的なことばかりというのが、正直なところでしょう。


そんなインドについて、コンパクトな中に幅広い項目を網羅して、要領よくまとめられた本がこちらです。


インドの各地に深く入り込んだ著者の豊富な経験に裏打ちされたバランス感覚あふれる洞察が、特定の立場に立脚しない抑制的な筆致で綴られています。


虚飾を抑えた実務的な内容でありながら、実は文体は流麗で読みやすいので、ちょうど東京から新大阪の2時間半を集中すれば読破できます。


著者がもっとも言いたかったことが、巻末に記載されているので引用します。

″多くの課題を抱えながらも独自の経済発展を続ける超大国インドの将来性は、いくら強調しても強調しすぎることはない。″(292頁)


現代インドに関する良質な入門書といえると思います。


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