2023/12/17 22:23
こちらは、灘の名門・白鷹のお燗瓶です。
お燗瓶は、清酒の容器として非常にすぐれた機能をもっています。
第一に、正1合という非常に厳格な容量です。
飲食店などでお燗を頼むと、たいがい陶器製の徳利に入れられて運ばれてきます。
お品書きに「1合いくら」と明記されていたとしても、その徳利に正1合(本当の1合=180ML)が入っているかどうかは、定かではありません。
定かではないどころか、それより少ないお酒の量しか入っていないことが多いのが実情です。
これに対して、お燗瓶の場合には容器に「180ML」と明記してあり、なかには瓶の製造時に型押しで、「容量 180ML」と誇らしげに彫り込んでいる蔵もあります。
なので、「本当の1合」なのか、「言ってるだけ1合」なのかという心配はありません。
(なお余談になりますが、お燗瓶にも「1合未満の1合瓶」も存在しますので、ちょっと厄介ではあります。飲食店が陶器の徳利を運用する際に、7割くらいの容量でも「1合」と呼ぶことがあるのを追認して、1本のお燗瓶の容量を150MLとしているケースです。業務用需要に強い蔵元では、「正1合」のお燗瓶と併売する形で、「150MLのお燗瓶」を商品ラインに加えています。当然ですが、その際には瓶に「150ML」と明記してありますので、蔵元に詐称の意図はありません。)
第二に、衛生的であることです。
飲食店の陶製徳利は、口がすぼまっていて、中のほうが太くなっているので、お店の洗い場でキレイに洗うのが難しい構造です。
往々にして、洗い残しが生じてしまいます。
清酒は栄養満点なので、洗浄不足のままですと、カビが生えたりしますが、外からは見えないために、そのままになって何度も使われることになります。
その点、お燗瓶は1度使用されるごとに、正規流通ルートを通してメーカーに戻されます。
メーカーでは、高圧洗浄機により完全に洗浄されます。
ここで洗い残しがあると、次に出荷するお酒の品質が劣化しますので、会社の存亡をかけて洗うわけです。
第三に、銘柄が明示してあることです。
当然と思われるかもしれませんが、陶器の徳利では中身がどの銘柄なのか、お客のほうでは判定できず、お店の言うことを信用するしかありません。
お燗瓶の場合には、製造者の銘柄が表側に彫り込んであり、裏側には詳細の表示があります。
お客の目の前で開栓してもらえば、中身が入れ替わっていることも防ぐことができます。
お燗の文化が廃れていった背景には、お客さんが漠然と抱くこうした不信感もあったのではないかと考えています。
紙幅が尽きましたので、白鷹の利き酒レポートは回を改めさせて頂きます。