2023/12/29 22:15
昭和の末期に勃興した「顧客志向のマーケティング」という概念があります。
日本は高度成長期には、メーカーが「良い物をより安く」出せば、お客さんが喜んで買ってくれた時代が長く続きました。
業種を問わず、製造業にはそうした習性が染みついていたときに、いってみればアンチテーゼとして出た用語でした。
いまでは考えられないのですが、そのころの「良い物」とは、メーカーが考える「良い物」でした。
なぜならば、最新の技術動向などに一般消費者は疎くて、何が欲しいのかという部分まで、消費者は自分で自分のことがわかってなかったからでした。
たとえば、FAXを見たことのない人が、「FAXが欲しい」とは思わないわけです。
(と思われていた、もしくは、と稟議書に書かれていた)
こうした新製品開発の姿勢は、 Product Out と形容されました。
商品プッシュ型です。
これに対して、いや、そうじゃないよ、お客さんが欲しいものを、もっとキチンと詳しく調べてから、それに沿って開発しましょう、という新しい流れが沸き起こりました。
その発想は、Market In とい用語で表現されました。
市場に飛び込め、みたいな感じですかね。
Product vs Market
Out vs In
という2組の対比で構成されているので、まあ、それなりに「旧弊を打破して新たな取り組みを」みたいな、日本人サラリーマンの好みそうな標語になったわけです。
以上のようなことは、ここで長々と書かなくても、読者諸賢は先刻ご高承のことですから、今更感が亢進していることと拝察して、今更感のない部分に入ります。
そもそも、経済学というかマーケティングの学術用語では、Product Out の反対は、Demmand Pull だったはずです。
ところが、マーケティング屋さんその人たちが、Market In という新用語を創出したのは、いったいどうしてなんでしょうか?
そこには、行動変革を求める意思があったと考えられます。
メーカーの製品開発の最前線で、毎日毎日、新技術を起点とした商品開発に汗を流している人たちに、「実験室から飛び出して、お客のところへ飛び込め!!」というメッセージだったのでしょう。
コペルニクスではないですが、行動様式以前の、思考経路というか、発想の方向性を180度逆向きにしなさいよという指示です。
言われたほうは、人格を否定されたように感じた人もいたのではないかと同情したくなります。
この調子で教科書みたいな記述が続くと、読者の方々も離れていっちゃうと思いますので、結論を急ぎます。
(次回に続きます。ちゃんとワインの話になりますので、脱落せずによろしくお願いします)