賢者のワイン

2024/01/02 16:06



第5次ワインブームで、チリ産にカベルネソービニヨンのワイン(チリカベ)が市場を席捲した話の続きです。


地上波テレビの影響とはどういうことかと申しますと、「まったく方向違いの人たちが大挙して押し寄せる」ことです。


チリカベに押し寄せたのは高齢の女性たちでした。

体にいいからワインを飲むという、ワイン業界では考えたこともなかった発想で、これまでワインを飲んだことのない客層がワイン売り場に殺到したのです。

 

ワイドショーで専門家が推奨していた受け売りで、「フルボディのワインください」というのが決まり文句でした。


当然ですが、「フルボディ」という名前のワインなどありませんから、売り場の店員さんたちは、それに合致するワインをめいめいで選んでお奨めしていました。


しかし、お客さんは文句を言います。「どこにもフルボディって書いてないじゃない!」というのでした。


それで、各社とも裏ラベルに「フルボディ」と明記するようになりました。

それどころか、ボトルネックに「フルボディ」などと大書するPOPを吊り下げるところも出てきました。


ある日、メーカーの担当者は耳を疑いました。

お客様コールセンターにかかってきた電話が、これまで聞いたことのない内容だったからです。


「ワインを飲もうとしたら、瓶から≪おが屑≫が出てきた。不良品だ」。

ワインの製造工程や瓶詰工程において、おが屑などが混入する可能性はまったくありません。最初は何を言っているのか見当もつきませんでした。


やっとのことで、瓶の栓として使用していたコルクのことを、おが屑の塊だと思い込んでクレームの電話をしてきたことがわかりました。


顧客の声、市場の声とはこういうことなのです。

神の声は移ろいやすいのです。その時、その時の声に反応していると、大局を見失います。


時流に過度に左右されることなく、ワイン醸造の基本に忠実で、まじめに正しいワインを造っている生産者は、無名でも数多く存在しています。


必ずしも耳障りの良い情報発信をしているとは限らないので、そのような生産者の造るワインが、急に話題を集めることはめったにありません。


そのような地味な存在でありながら、キチンと正しい造りをしている生産者とワインを発掘してお届けするのが賢者のワインです。

 

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