賢者のワイン

シャンパンです。ポール・ロジェです。

英国首相だったウィンストン・チャーチルのお気に入りで、ここの最上級品には彼の名が付けられています。

こちらは、その最上級品ではない普通のものですが、１９８６年のＶＴです。

コルクはもちろん、その上にかぶせてある金属のカバーにまで１９８６と印字されています。

グラスにシュワシュワと泡が立ちます。３８年目を迎えていることを感じさせません。

濃い目の黄金色の輝きです。トーストやヘーゼルナッツの芳香で、まさに教科書のとおりの熟成した良質のシャンパンの風格が飲む前から漂います。

口に含んで驚きました。口腔内に強靭なアタックをもたらしています。

矍鑠（かくしゃく）たる老師とでもいうのでしょうか。

衰えという言葉自体を想起させない筋骨隆々の状態を表現するなら、５０歳ごろのカール・ゴッチというべきかもしれません。

酸がしっかりと全体を支えていますが、まったく酸化しておらず、ほのかな甘みも感じて、濃醇なコクが支配しています。

吐息に再びトースト香の至福をもたらす、現役バリバリのベテランでした。